五稜郭ジンギスカン鍋 蟻の火ふき
函館でただ一人の鋳物用木型職人が、熟練の技を駆使して作り上げたオリジナルのジンギスカン鍋。輻射熱の効果で肉の旨みを閉じ込めるため、肉がおいしく焼けると評判。
ジンギスカンといえば、北海道でおなじみの羊肉(ラムなど)の焼肉料理ですが、これは函館にふさわしい、五稜郭をかたどったジンギスカン鍋。函館でただ一人、北海道でも数少ない鋳物用木型職人の上野山隆一さんが技術の粋を集めて製作。2013年、第57回函館圏優良土産品推奨会の最高賞にあたる函館市長賞を受賞しました。「蟻の火ふき」は桔梗の花の別名。五稜郭を上から見た形が桔梗の花に似ていることから命名されました。
鉄の厚さは最も薄い場所で5.5ミリ、厚い場所では7ミリもあり、ずっしりとした重み。鉄が薄いと肉が焦げやすくなり、厚すぎると火の回りが悪くなるため、研究に研究を重ねてこの厚さにたどり着きました。火が均一に回り、肉がよく焼けるように、中心部と外側とで厚さを変えているのだといいます。表面には細かな凹凸が施されているため、必要な油は表面に残し、余分な油は下へ流してくれるうえ、輻射熱の効果で肉の表面がしっかりと焼けるため、風味を逃さずにぎゅっと中に閉じ込める効果も。使用した人からは「鍋が違うと肉の味が違う」との声が聞かれます。表面積を増やして熱を効率的に吸収するための凹凸を鍋の裏側に設けるなど、見えない部分にも工夫が凝らされています。
一般的に鋳物の鍋に施される塗装処理を一切行わず、かわりに鍋を高温で焼き、特殊な油を塗る「オールドフィニッシュ処理」を行っているのもこの鍋の特徴。このため、初めて使用する時点ですでに何年も使い込まれたかのようにしっかりと油がなじむのです。上野山さんは普段、日本中のメーカーや工場などから寄せられる注文に応じて機械部品などの精密な木型を製作しており、その腕前は折り紙つき。この鍋でも、中央部分に置かれた箱館奉行所や、周囲に施された1ミリ以下の凹凸などにその技術を垣間見ることができます。
これまで、「自宅で客をもてなす際にこの鍋でジンギスカンをしたい」という地元客のほか、「みんなでこの鍋を囲んで故郷を思い出したい」という道外在住の函館出身者、さらには本格的な鉄鍋を探し求めていたマニアなどから注文が寄せられているとのこと。函館空港、丸井今井函館店、ウエノヤマ技巧の公式サイトにて販売中。7700円。公式サイトでは、函館山をあしらったジンギスカン鍋など、他のバリエーションも販売されています。