オダギリジョー主演「オーバー・フェンス」、函館ロケ地ガイド
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あなたのテーマでディープな函館
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ロケ地・聖地
2016年9月17日に公開され、大ヒット上映中の映画「オーバー・フェンス」。原作は、函館出身の作家・佐藤泰志。山下敦弘監督のもと、オダギリジョーさん、蒼井 優さん、松田翔太さん、北村有起哉さん、満島真之介さんなど、これ以上ないほどの豪華キャストが集結。2015年6月下旬から約1カ月かけて、函館各地でロケが行われました。
全国公開に先立って函館で7月に行われた完成披露上映会で、オダギリジョーさんが蒼井優さんとの共演を振り返って、「計算を通り越したシーンになりましたね。まさか、ああなるとは......奇跡の連続でした」と語ったこの作品。「奇跡」を生んだ函館の風景、ロケ地を、監督とキャストのコメントも織り交ぜてご紹介します。
(夜の街を自転車で行くシーンは「末広町」電停付近の市電通りで撮影)
©2016「オーバー・フェンス」製作委員会
◆函館公園(こどものくに、動物舎など)
故郷・函館に戻って職業訓練校に通いながら失業保険で暮らす主人公、白岩(オダギリ)。その白岩と恋に落ちる聡(さとし・蒼井)がアルバイトをする遊園地は、函館公園 こどものくにで撮影が行われました。
「最初からここで撮ることは決まってました。今、ああいったところ(どこか懐かしさを感じさせる、レトロなたたずまいの公園)は、なかなかない。あの場所から、聡のキャラクターが膨らんでいきましたね(山下監督)」
©2016「オーバー・フェンス」製作委員会
夜の函館公園にて、「鳥の求愛ダンス」のシーン。どこか危うさと妖しさを持つヒロイン聡の魅力が、スクリーンからあふれ出します。
「聡が涙を流すシーンは、蒼井さんには一言も『泣いてくれ』とは言ってません。『泣かないで』とも言ってないんですけどね(山下監督)」
「ヒロイン聡は難しい役で、現場では不安でしたが、胸を張れる作品になりました。この作品に携われたことを光栄に思います(蒼井)」
©2016「オーバー・フェンス」製作委員会
函館公園のミニ遊園地「こどものくに」。聡が係員として子どもたちに接するシーンが、たびたび登場します。
函館公園内の動物舎でも、聡が働くシーン、白岩が聡に会いに来るシーンが撮影されました。象徴的に登場する白頭鷲(ハクトウワシ)も飼育されています。
すりばち山にある東屋。夕方に聡が海を眺めるシーンが印象的です。天気がいいと、対岸の青森県下北半島までくっきりと見えます。
◆市電通り「青柳町」電停付近の坂
白岩が街なかを移動するのは自転車。数々の映画やCMのロケ地になった市電「青柳町」電停に向かう坂も、さりげない日常のワンシーンとして登場しました。
「この街をこう言う風に切り取ろう......とは特に思ってなかったんですが、結果的に、街が色や匂いをつけてくれました(山下監督)」
©2016「オーバー・フェンス」製作委員会
◆津軽海峡を望む漁火通り・大森浜
津軽海峡の海岸沿いに走る「漁火(いさりび)通り」も、白岩が自転車で走るシーンでたびたび登場。モノクロームのような海と空をバックにかもめが行き交うカットが印象的です。啄木小公園付近の堤防ぞいの道は、函館マラソンのコースにもなっています。
©2016「オーバー・フェンス」製作委員会
大森浜の海沿いに自転車を走らせると、こんな懐かしい風景に出会います。撮影の多くは市民の生活道路で行われました。
「函館では、自分たちが『撮りたい』と思うところで撮らせてもらったし、『これって、できるのかな』ということができましたね。役者たちはとても楽しそうだったし、みんなのびのびとやっててオープンだった。函館は、居心地がいいんだな、と。飯もうまいしね(山下監督)」
©2016「オーバー・フェンス」製作委員会
◆幸坂
函館には、函館山に向かって何本も坂がありますが、その中でも一、二を争う長い坂が幸坂。白岩が自転車をこいで上ってくるシーンはこの坂です。映画のなかでは、聡の働く函館公園に向かう坂という設定になっています。
◆海のダイニングshirokuma
白岩が元妻・洋子(優香)と再会する喫茶店は、ベイエリアのレストラン「海のダイニングshirokuma」。大きな窓から港を見渡せる好ロケーションにありました。
※2021年9月閉店
◆観光遊覧船ブルームーン
喫茶店を出て、白岩と洋子が乗船する観光遊覧船ブルームーン。
©2016「オーバー・フェンス」製作委員会
観光客の多く訪れるベイエリアのにぎわいが、このシーンを異質な空気感で満たします。
©2016「オーバー・フェンス」製作委員会
遊覧船から見える函館山の風景も印象的です。
◆繁華街・五稜郭の雑居ビル
白岩の職業訓練校の同期生・代島(松田翔太)が行きつけの、聡がホステスとして勤めるキャバクラ店も、スクリーンに独特の雰囲気を落とします。
©2016「オーバー・フェンス」製作委員会
ここは、五稜郭の繁華街の裏通り、本町児童公園近くの雑居ビル(グリーンエステート)2階に入るスナック「ライブ・イン絹」が舞台となりました。
外のシーンは、別の場所で撮影。市電「中央病院前」電停近くの路地は、表通りの喧騒から少し離れた独特の雰囲気のある場所です。
◆高盛公園グランド
白岩たちの通う職業訓練校のグラウンドのロケ地は、旧高盛小学校の隣にある高盛公園グランド。漁火通りの函太郎 宇賀浦本店から歩いて5分ほどのところにあります。
©2016「オーバー・フェンス」製作委員会
年齢も経歴もさまざまな訓練生たちの、苦悶や希望が渦巻く職業訓練校。大学を中退してやってきた森(満島真之介)も、重く暗い闇を抱えきれず......。
「この役に挑戦できたことが嬉しかったです。(役作りのため)、函館ロケの1カ月、まったくベッドに横にならない生活を続けていました。ロケ自体は合宿生活のような雰囲気で、ずっと函館で遊んでいて、函館が好きになりました(満島さん)」
©2016「オーバー・フェンス」製作委員会
【完成披露上映会の舞台挨拶と特別インタビュー】
全国公開に先立って2016年7月12日、函館市芸術ホールで完成披露上映会が開かれ、(右から)山下監督、オダギリジョーさん、蒼井 優さん、満島真之介さんの4人が、揃って舞台挨拶に立ちました。
「役者もスタッフも、全員が一丸となってできました。みんなでフルスイングして生まれた作品。僕の中では全員が主人公ですね。テーマは前もって頭に置かず、観てもらった方々に感じてもらえたらいいな、と。役者たちが、すごい芝居をしています(山下監督)」
「山下監督と僕は、ほぼ同い年なんですよね。1976年生まれ(会場から「エー!」の声)。30代を締めくくる作品に携われました。20代の頃に監督と作っていたら、こうはならなかった。40歳だから醸し出せるものを切り取ってもらいました。役者として、どうにか生き抜いた結果の作品です(オダギリさん)」
「函館は、映画撮影がやりやすい環境だと思いました。でも、函館弁は難しかったですね(蒼井さん)」
「僕はオダギリジョーさんの映画『HAZARD(ハザード)』を観て、この世界に入ることを決めたんです。DVDもCDも持ってます(会場は驚きと笑いの渦)。今日は『ぜひ(舞台挨拶に)連れて行ってくれ』と無理にお願いして、ここに立ってます(満島さん)」
山下敦弘監督、満島真之介さんのスペシャルインタビュー
「同じ佐藤泰志原作の『海炭市叙景』『そこのみにて光輝く』の2作を観てましたので、函館は寂しいというイメージから入ってしまったのですが、(実際に来て撮影してみると)函館は、それだけじゃないな、と。オープニングは、赤レンガ倉庫での撮影シーンを考えていたんですが、その話も、最終的にはなくなりました。函館の観光名所は、あまり出てこない映画ですね。函館は独特。ここで、多くの映画人が映画を撮ったんだな、と感じます。晴れの日差しと、曇りの日のギャップが大きく、天候によって、街の見え方も違ってきますね(山下監督)」
「僕はかつて、自転車で北海道を全部回ったことがあります。いろいろな街を見た上で感じるのは、函館は、北海道と本州の「架け橋」だということ。函館は、夜景も輝いてますが、人も輝いてる街です。ロケ中も自転車であちこち回りました。地元の人が行く食堂にも行きましたし、函館公園にも行きました。こんな場所はどこにもありません(満島さん)」
2016年9月17日(土)より全国公開、大ヒット上映中⇒上映劇場情報
「海炭市叙景(2010年公開/熊切和嘉監督)」「そこのみにて光輝く(2014年公開/呉美保監督)」とともに、函館出身の作家・佐藤泰志の「函館3部作」の最終章と位置づけられている作品。原作は1980年代の函館を描いていますが、現代に置き換えても違和感なく、作者の短編「黄金の服」を融合させたオリジナル設定が、登場人物に深みを与えています。
©2016「オーバー・フェンス」製作委員会
シネマアイリス 0138-31-6761
函館市本町22-11(グリーンエステート1F) 市電「五稜郭公園前」電停から徒歩3分
この映画を企画・製作したのが、函館の映画館シネマアイリス。代表の菅原和博さんは、函館出身の作家、佐藤泰志の作品集と出会ったことをきっかけに、佐藤作品の映像化に奔走しました。「オーバー・フェンス」は、「海炭市叙景(2010年)」「そこのみにて光輝く(2014年)」に続く、函館3部作の最終作。多くの市民がエキストラやスタッフとして参加した、まさに「函館市民発信映画」といえます。
「『オーバー・フェンス』の世界観をより深く感じたいと思うかたは、函館を訪れて、シネマアイリスでご覧になってはいかがでしょう(菅原)」
「オーバー・フェンス」ロケ地マップ
※舞台挨拶撮影/宮田一人
2016/9/15公開