函館の日常を味わう「温泉銭湯」の魅力
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あなたのテーマでディープな函館
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温泉
長い歴史とともに市民に愛され続けてきた「温泉銭湯」。函館には水道水を利用した沸かし湯ではなく、天然温泉を利用した銭湯スタイルの入浴施設が多数あります。それは身近な社交場として親しまれ、温泉銭湯と呼ばれているのです。
ゆったりと流れる時間と、飾らないレトロな雰囲気で、心身ともにリラックスできる心地よさ。そこにある函館の日常は、旅行者の方にとっては魅力ある「非日常」かもしれません。観光情報誌に載ることの少ない温泉銭湯で、その湯とともに函館市民との会話まで楽しんでみる......これまでの温泉旅行の「定番」とはひと味違った、新しい温泉の楽しみ方を試してみませんか。
(上)湯船でくつろぐ。なにものにも代えがたいひととき(大盛湯)
◆日常の中に引き継がれてきた、分け隔てない裸づきあいの心地よさ
函館市民にとって、温泉銭湯は憩いの場所です。意図して演出されたレトロ感ではなく、ごく自然に日常の中に溶け込んでいる空間。記憶の引き出しの奥底に眠っているノスタルジックな光景を思い起こさせてくれる場所。昔からそのままに、人々が使ってきたものがそこにはあるのです。
また、温泉銭湯は分け隔てのない裸のつきあいの心地よさを味わえる場所でもあります。ある日のこと、シャンプーを忘れて頭にシャワーをかけていると、
「シャンプーかけて、サッパリしなさい!」
という威勢のいい声が、頭上からシャンプーとともに降りかかってきました。それは、隣にいた常連さんの温かき仕業。裸になれば、そこに年齢や立場の違いはなく、ただそこに居合わせた仲間として心地よいひとときを過ごせます。
(上)カランの様子(大盛湯)
(左)銭湯以外ではほとんど見かけることがなくなった体重計(大盛湯)
(右)湯船に惜しみなく注がれる源泉と、pH値の高い地下水(西ききょう温泉)
◆湯の川は温泉銭湯の聖地。遊歩道を歩きながら、歴史に思いを馳せる
市電の終点である湯の川は、函館の温泉銭湯の聖地ともいうべき街。永寿湯、大盛湯、長生湯、根崎湯など、歴史を感じさせる佇まいの温泉銭湯がありました。
その歴史は古く、今から560年近く前の1453年、木こりが湧き湯を見つけて痛めた腕を湯治したのが始まり。大正2年に馬車鉄道が電車に替わり、北洋漁業の隆盛とともに賑わいを極めました。当時、函館で財をなした商人は湯の川に別荘を建てることが多く、立派な庭園のある屋敷がたくさんあり、昭和20年頃まで「函館の奥座敷」といわれていたのです。
そんなかつての栄華に思いを馳せながら、湯の川を散策して温泉につかれば、その味わいもより深いものになることでしょう。
(上)湯の川温泉街を流れる松倉川の夕焼け
(左)湯の川温泉街への足として利用する市電で見かける、シンプルで機能美あふれる吊り手(市電530号)
(中)松倉川ぞいの、ステンドグラスを配した街灯にたたずむカモメ
(右)松倉川ぞいの、遊歩道にあるベンチ
◆市内の温泉銭湯で、さまざまな楽しみ方を
湯の川以外にも、観光情報誌に掲載されることが少ない小規模の温泉銭湯が市内各地に点在しています。
住宅地の中や郊外で、観光ではなかなか行きつかないようなところに思わぬ渋い温泉との出合いが。
さまざまな湯船のある中で飲泉にトライしたり、マニア垂涎の「秘湯」的温泉で熱くジンワリと温まる湯を楽しんだり。
長く市民に愛されてきた財産ともいえる温泉銭湯を、ゆったりと流れる時間とともに味わってみませんか。
(左)飲泉の蛇口(にしき温泉)
(右)湯船からあふれ出る湯によって、描き出された模様(西ききょう温泉)
2012/3/29公開
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