大規模工事終了で色鮮やかに、函館ハリストス正教会
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文化・芸術
函館山のふもとのハイカラな街並みを形成する元町教会群。そのひとつで、国の重要文化財に指定されている「函館ハリストス正教会復活聖堂」が、足かけ3年の大規模工事を経て、2023年初めに美しい姿でよみがえりました。今回の工事のポイントとともに、見どころをレポートします。
【ポイント1 屋根・外壁の保存修理】
函館ハリストス正教会の復活聖堂は、1916(大正5)年に建てられました。レンガ造りで外壁はしっくい仕上げ、緑青銅板の屋根の青とのコントラストが美しい、函館を代表する洋風建築です。前回の保存修理は1986~1989年。30年以上たって、傷みが目立つようになったため、2020年から3年をかけて大規模な修理工事が実施されました。
外壁に塗られたしっくいは、長年の雨風で剥落や汚れが目立ち、一部に土台のレンガが露出しているところもありました。今回、すべて修復され、まぶしいほど白いしっくい壁がよみがえっています。
傷んで退色していた屋根も、「緑青(ろくしょう)銅板」に全面葺き替え。銅にできた緑青の被膜が表面をコーティングすることで、耐久性が高まるそう。修復前より鮮やかな青緑色になりましたが、時を経ることで落ち着いた色に変化します。
【ポイント2 鐘塔の耐震補強】
事前の耐震診断によって鐘塔部の耐力不足が確認されたため、補強が行われました。
屋根の内側は、ぐるりと8角形に鉄骨をめぐらせて、白いペンキで塗装。
外側からはわかりませんが、鍾塔の真下のレンガ壁に粘り強い「アラミドロッド」を差し込み、地下に設置したコンクリートの重りにつなげて、地震時の浮き上がりや倒壊を防ぎます。
【ポイント3 聖堂内部の補修等】
2020年のクリスマス以降、聖堂の一般公開は中止され、内部の保存修理が行われていました。このたび外壁と同様、内側のしっくいの傷みも修復され、ろうそくのすすなどによる汚れもきれいになって、明るい印象になりました。(聖堂内の一般公開は2023年3月27日から)
正面の聖障(イコノスタス。イコン=聖画像が掛けられた仕切り壁)はこの場で補修・洗浄され、木製の枠はつややかに再生。一方のイコンは、一度取り外されて美術修復の専門業者によって修復され、くっきり色鮮やかになりました。
天井から下げられた照明の電球は、今回LEDに交換。
窓枠は塗り直されて、グリーンが鮮やかになりました。
聖堂内に敷かれている花ござは、建築当初の柄に復原。目の細かいござに、唐草模様が3色で印刷されています。(公開が再開されると、保護のために絨毯でおおわれるため、目にすることはできません)
◆2023年春まで、敷地内の見学は西門から
カトリック元町教会との間の道(港が丘通)に面した正門も、耐震補強工事が施され、門扉が色鮮やかに塗り直されました。
こちらは雪が積もっている冬の間、安全対策のために閉門されていますが、向かって右手奥の遺愛幼稚園側にある西門から、敷地内に入ることができます。
鍾塔を正面に見ての出入り口。
敷地内では、聖堂・鍾塔を周囲から眺めることができます。今後、庭園の工事などが行われる予定です。聖堂内の一般公開は、2023年3月25日から(詳細)。ぜひ色鮮やかに修復された聖障などを拝観して、貴重な歴史と文化を感じてみませんか。