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道南で秋そばを楽しむ<その1>

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 香り高く深い味、爽やかなのど越し…職人技が光る格別の一杯を求めて、函館・道南で新そばの旅に出かけてみました。
 1回目は函館市のほかに北斗市、福島町、松前町のお店を紹介。ちょっとしたドライブにもおすすめです。

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手打ちそば久蔵

地産地消で築いたそばで老舗旅館ににぎわいを

 函館市南茅部地区で1933年から続く「二本柳旅館」内で、昼時だけ営業する人気店。4代目当主・二本柳芳樹さんは「旅館に昔のようなにぎわいを取り戻したい」と、もともと好きだったそばに着目し、宿泊客のために日々板前として腕を振るいながら函館市の手打ちそば店「がびの」に1年間通って修業。ガラス張りの工房を構え、2011年からそばの提供を始めた。

 「そばは打つほどに奥が深く、これでいいということがない」と二本柳さん。毎朝5時から工房に立ち、味の研さんを重ねてきた。この日使ったそば粉は今金町産の「きたわせ」。七飯町で調達する湧き水で水回しし、1.5ミリの厚さに均一にのして細打ちする二八そばは、コシがあり甘みが濃厚で、地域特産の白口浜真昆布や厚削りのカツオ節、干しシイタケからダシを取る香り高いつゆとのバランスも絶妙。特大のアナゴを一本使う天ぷらは、表面カリッと中ふんわりとした仕上がりに板前の技が光る。地元食材から生み出すそばが、老舗旅館に新たな風を吹かせている。

手打ちそば 久蔵

函館市豊崎町64、二本柳旅館内

☎0138‐25‐3001

11:30~14:30(14:00ラストオーダー)

木・金曜定休 禁煙 駐車場あり

キャッシュレス決済利用可

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■手打ちそば工房はぎ乃

牧歌的な風景を楽しみ、熟練の腕で打つ外二に舌鼓

 田園風景が広がる北斗市萩野で2016年にオープンした農家レストラン。伍楼実店主は、市の公務員として在職中に「自らそばを栽培し、手打ちして食べる」がモットーの「大野そば愛好会」に所属して技術を身に付けた。定年退職後に農家レストランを開くべく新規就農。耕作放棄地を譲り受け、収量や生産者が少ないことから幻とも言われる牡丹種のそばの栽培をスタートした。

 提供するのはもりそば、かけそば、とろろそばなど7種類。「その土地で生まれたものを食べてもらうのが最高のもてなし」と、朝5時に店の工房に立ち、その日提供する約25食分のそばを打つ。長年培った腕前を発揮して打つのは、甘さと香りが好バランスの外二そば。沸騰した鍋に投入し再沸騰後1分でゆで上がる太さにカットする。粗削りのカツオ節、宗田カツオ節、サバ節、コンブ、干しシイタケなど複数の素材で旨みを引き出したまろやかなつゆは、そばの風味を引き立てるキリッとした味わい。細部にまでこだわりを込めたそばが、今も道内外にファンを生み出している。

手打ちそば工房 はぎ乃

北斗市萩野36‐40

☎0138‐77‐7580

11:30~14:00

土・日・月曜のみ営業 禁煙 駐車場あり

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■千軒そば

滋味深くのど越し滑らか 千軒産の十割そば

 福島町千軒地区の町おこしを目的に2005年開店した、国道228号線沿いにある千軒そば生産会の直営店。例年、大千軒岳の麓で7月に作付けしたそばを9月に収穫し、近隣の生産拠点施設で石臼式製粉機を使いそば粉に加工。生産会の佐藤孝男会長が「千軒の昼夜の激しい寒暖差が強い甘みを生み、収穫後に自然乾燥させることで豊かな香りを引き出す」と胸を張る、自慢のそば粉のみを使った十割そばを求めて、道南はもとより訪日観光客も訪れる。

 厨房に立つのは中塚かおりさん、岡本智実さん、館政愛澄さん、品川美恵さん4人の〝地元の母さん〟。メニューはもりそばやエビ天そばなどを用意しており、地産地消を掲げ、そばの味を引き立てるつゆのダシにも地場産シイタケやコンブを中心に活用し、甘めに仕上げる。秋の時期のお薦めは、山の幸が彩る「冷山菜そば」。つるりとした舌ざわりのワラビ、タケノコ、ナメコと一緒にそばをすすれば、鼻腔をくすぐる力強いそばの風味や香り、滋味豊かな味わいに夏の暑さで疲れた体が癒やされる。

千軒そば

福島町千軒283 

☎0139‐47‐2772

11:30~14:30(14:15ラストオーダー)

水・木・土・日曜のみ営業 

※今季の営業は12月中旬までを予定

禁煙 駐車場あり

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■手打そば おぐら

〝長流江戸打ち〟の技で城下町にとびきりの味を

 江戸時代、日本最北の城下町として栄えた松前町。かつて北の小京都とも称された町並みの再興を目指し、町屋造りに建物の外観が統一された城下通りの完成に合わせ、2006年にオープン。地域の人に質の高いそばを提供しようと、札幌市の手打ちそば店で修業した小倉行雄店主が立ち上げた。

 小倉店主が身に付けたのは〝長流江戸打ち〟と呼ばれる江戸時代から伝わるそば打ち技法。そば粉を練り上げ生地から空気を抜く工程に独特の技があり、コシの出方が一味違うという。そば粉は北海道の中でも昼夜の寒暖差が大きい道北に産地を限定し、その時期のそばの状態に合わせ、道産小麦「キタホナミ」を合わせた九割そばから新そばを使う十割そばまで、日々配合を変えて味を追求。しっかりと旨みを感じてもらうため、やや太めに打っている。つゆは再仕込みしょう油を使い60日間かめで熟成させまろやかになったかえしと、本ガツオなど、3種類の削り節に、さらに花ガツオを加えたダシを配合。そばをすすれば芳醇なダシの香りと濃厚なそばの風味が一体となり、思わず笑みがこぼれる。

手打そば おぐら

松前町松城60

☎0139‐42‐2128

11:00~15:00ラストオーダー

水・木曜定休 (ほか不定休あり)

禁煙 駐車場あり

(この記事は、フリーマガジン「ハコラク」10月号から再構成したものです)


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