道南で秋そばを楽しむ<その2>
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ドライブ
香り高く深い味、爽やかなのど越し…職人技が光る格別の一杯を求めて、函館・道南で新そばの旅に出かけてみました。
2回目は函館市のとなり町、七飯町をフィーチャーしました。
■板そば池田屋 序葉久(じょはきゅう)
明治時代の建物で繊細かつ濃厚な挽きぐるみを味わう
函館市元町にある江戸前手打ちそば「久留葉」の姉妹店で、国道5号線沿いに2013年にオープン。店舗は七飯町の有力者で燃料店を営んでいた池田家の築130年を超える建物をリノベーションして活用。古き良きたたずまいの中、店主と二人三脚で店を盛り立ててきた吉川幸孝店長が腕を振るい、山形県の「板そば」を基本に、天ぷら付きやつけそば、季節限定の創作そばを提供する。
現在の時期は後志管内蘭越町の契約農家から、厳選した玄そばを直接仕入れて使用。店内の石臼でその日使う分だけ殻付きで挽いた挽ぐるみの十割そばで、食べやすい中太に仕上げる。つゆのダシは鹿児島県指宿市から枯節のまま取り寄せるカツオ節やサバ節などを使用。ダシ感の強い甘めのつゆにくぐらせて食べれば、そばの豊かな香りと濃い甘み、ザラついた独自ののど越しに夢中になる。板そばは盛りも良く、一番少ない「小」でも220グラムある。この店ならではの技が光る一枚を心行くまで堪能したい。
板そば池田や 序葉久
七飯町大川1‐10‐4
☎0138‐64‐2211
11:30~15:00
※金・土・日曜・祝日は17:00~20:00も営業
(各30分前ラストオーダー)
不定休 禁煙 駐車場あり
キャッシュレス決済利用可
■ダイニングBASSO
七飯の水と幌加内産そば 日々勉強し愛される味に
JR七飯駅前にあり、一見すると喫茶店と見まがうたたずまいだが、店内に入ると壁にのし棒が並ぶそば打ちスペースに出迎えられる。ここで毎朝打ちたてのそばを用意する高橋留美子店主は、上川管内幌加内町の「新そば祭り」に通ううちにそばに魅せられ、好きが高じて2019年に店をオープン。横津岳を有する七飯町の水を使って腕を振るっている。
味とのど越しを追求して試行錯誤を重ねるそばは、石臼挽きの幌加内町産そば粉と厳選した中力粉を合わせた二八。ダシは深みが出るよう鹿児島県指宿市山川産カツオの枯節を厚削りで使い、かえしは1カ月かめで寝かせてまろみを出してから調和の取れたつゆに仕上げる。日々苦心しながら工夫を続けているが、「経験を積むほどに見えるものが増え、毎日が勉強。これからもお客様に喜ばれ、また食べたいと思われるそばにしていきたい」と調理から接客まで一人でこなしつつ、忙しい時でも来店客一人ひとりに気さくに声をかける高橋店主。和やかで明るい雰囲気の中味わえるこだわりのそばが、地域の人の心をつかんでいる。
ダイニング BASSO
七飯町本町3‐18‐26
☎0138‐65‐2040
11:00~15:00 ※そばがなくなり次第終了
木・日曜定休
禁煙 駐車場あり
キャッシュレス決済利用可
■本格手打そば工房 蕎麦小屋
職人らに受け継がれる3種類の牡丹種そば
1998年、大のそば好きだった川口潤一さんが脱サラし、こだわりを詰め込んで立ち上げた一軒で、道道上磯峠下線沿いの大きなログハウスに暖簾を掲げる。2017年に川口さんが急逝した後も、妻の洋子さんが店主となり、職人らに製法を伝えながら味を守ってきた。
ここで味わえるのは、空知管内浦臼町の契約農家から仕入れる牡丹種のそば粉で打つ二八。一番粉と二番粉をブレンドした「オリジナル」を基本に、数量限定の「更科」と全粒粉を使う「挽ぐるみ」の3種類を用意し、どのそばにも合うよう3種類のカツオ節でダシを取るつゆとともに、開業時の製法をそのままに引き継ぐ。春は行者ニンニク、夏はジュンサイや沼エビ、秋は厚沢部町のゴボウと、季節の天ぷらを毎年楽しみにするファンも多い。「今日まで続けてこられたのは毎週のように通って下さるリピーターさんや、友達や家族を連れて味を広げてくれたお客さまたちのおかげ。人に恵まれました」と川口店主。大野平野を眺めながら堪能できるこのそばが、多くの人の大切な味となっている。
本格手打そば工房 蕎麦小屋
七飯町仁山433‐4
☎0138‐65‐2505
11:00~15:00ラストオーダー ※そばがなくなり次第終了
木・第2水曜定休
禁煙 駐車場あり
(この記事は、フリーマガジン「ハコラク」10月号から再構成したものです)