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木古内町の「寒中みそぎ祭り」体験記(その2)

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120109M03.jpg函館近郊の木古内町で、毎年1月13~15日に行われる「寒中みそぎ」。4人の若者が水ごりで身を清め、海中沐浴で豊作豊漁を祈願する勇壮な神事です。

 
「今度、木古内のみそぎ祭りに行ってくるよ」。函館に住んでいる友人たちにそう話すと、「あれ凄いんだってね」「テレビでやっていたのを見たよ」というような反応が返ってきます。ほとんど全員が、「風邪ひかないように行ってきてね」と気遣ってくれました。

 

雪の降りしきる2011年1月15日、寒中みそぎ3日目の「海中みそぎ」の模様をお伝えしましょう。

 

 

 


◆純白の雪に包まれた、朝の佐女川神社

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さて、前日に引き続き、函館近郊・木古内町の「寒中みそぎ祭り」へ。2日にわたる「水ごり」による鍛錬で身を清めた4人の行修者が、3日目の今日、津軽海峡の厳寒の海でみそぎを行い、豊漁豊作を願います。この「海中みそぎ」には、函館からのツアー客も多数訪れるそう。まさに、祭りのハイライトといえる勇壮な神事です。

昨日は函館からJR(当時。現在は道南いさりび鉄道)に乗っての一人旅でしたが、今日は友人とのドライブ。五稜郭あたりで8時前に集合、海沿いの国道228号を走って、約1時間で到着です。函館湾のふちをぐるりと回って木古内方面に向かうこのドライブルートは、函館山や津軽海峡を真横に眺めながらの絶景続き。ちょうど、朝の冷たい空気の中で発生する海霧「けあらし」が立ち上る、幻想的な光景も見えました。

木古内に着いてまず向かったのが、水ごりが繰り返されてきた佐女川神社(さめがわじんじゃ)。前日よりさらに雪が降り積もり、純白の真綿に包まれているようです。

浜での「海中みそぎ」は正午近く、10時の出御祭まで、まだ1時間ほどあります。正面の本殿では、4人の青年がその時を待っているはず。境内には、出御を見送ろうと訪れる人の姿もちらほらと見え始めています。

◆静かに出御の時を待つ、行修者たち 

110120reportT15.jpg本殿の前にも一般の方の姿がありましたので、私もお参りをしていこうと思って、階段を上っていきました。

すると、正面の格子の引き戸が開かれていて、中では出御を前に思い思いの時をすごす行修者の姿......。世話役の人や見送りの人と言葉を交わしたりで、思いのほか穏やかな空気が流れています。外の手洗いを借りたときに、すれ違って目礼を交わした表情にも、素直な若者らしさが感じられました。

支度が始まっても戸は閉じられることなく、すべては静かに淡々と進んでいきます。一般の見学者でもその様子を見守ったり、写真を撮ったりすることができました。

素肌に真っ白な下帯をしめ、上下の白い肌着、薄物・厚物の2枚の着物を重ね、白袴をつけて足袋をはき......。厚物の着物はふわふわの純白で、鍛錬を終えた体を包むのにふさわしく感じられます。少しは寒さから身を守ってくれるのでしょうか。
最後、堂内のいろりの前に並び、頭に白い布をつけるときに見せた、じっと気持ちを集中させているような引き締まった表情。気負いなく、不思議なほど静かな、深い、まっ白な境地に見えます。

布をつけている世話役の人は、これまでにみそぎを経験した方たちだそう。この3日間、行修者の厳しい鍛錬を支え続けてきたといいます。最後の支度を整える手から行修者へ、言葉にできない思いが通っているようで、胸がいっぱいになりました。見つめるまなざしの優しさも、忘れることはできません。

 


◆佐女川神社からご神体とともに、みそぎ浜へ

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10時半すぎ、いよいよみそぎ浜へ出発。本殿から4人の行修者が姿を見せました。胸に佐女川神社のご神体を抱え、たたんだ白い布を噛み、激しく降りしきる雪の中をゆっくりと歩いていきます。

行修者は4人。4つの役目を1年ごとに務めて、毎年1人が入れ替わります。2011年の顔ぶれは、(写真左から)主祭神である玉依姫命(たまよりひめのみこと)の「別当」を務める4年目の村上駿弥さん(20歳)。宇迦御魂神(うがのみたまのかみ)の「稲荷」を務める3年目の竹田峻輔さん(21歳)。大山津見神(おおやまづみのかみ)の「山の神」を務める久保田翔さん(18歳)。七福神の「弁財天」を務める藤原哲朗さん(18歳)。

この年新たに加わった藤原さんは、北海道教育大函館校の1年生。新聞などでも報道されたように、秋田県の出身で、みそぎ祭りを研究する教授を通じての縁だそうです。この日も、教授や友人たちが駆けつけ、みそぎ浜への行列に加わっていました。
学生さんに「みんなも、ひょっとしたらみそぎをやる可能性があったと思うけど、どうですか」と尋ねてみると、「自分には考えられなかった。藤原ならやると思ってたので、嬉しいです。応援してます」と、誇らしげな表情を浮かべていたのが印象的でした。


◆雪の降りしきる海でご神体を清める「海水沐浴」
 
110120reportT25.jpgみそぎ浜は、町の人や観光客などで身動きできないほどのにぎわいぶり。年配の方から、幼い子どもまで、約2000人が海中みそぎの瞬間を待ちわびています。

気温はマイナス4℃、海水温は7℃。みそぎ太鼓が打ち鳴らされ、大漁旗をなびかせた漁船が巡航する中、雪がどんどん激しくなってきました。

 

ご神体を抱いた行修者が浜の鳥居をくぐり、海の方へ歩みを進めます。前を見据え、胸をはり、ためらうことなく海に入り、ご神体とともに静かに沖へ。一度岸に戻り、向かい合ってご神体を浮かべたら、勢いよく水を掛け合って、みそぎを行います。岸から数十メートルのところでしょうか。激しさは伝わってきますが、何となくとても遠くの世界で行われているような、夢を見ているような、そんな光景です。

 

 

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今回の取材は、記者のKさんが海の撮影を担当。私は岸の端から見ていましたが、知らず知らずのうちに海の方へ歩き出し、いつのまにか寄せては引く波の中に立っていました。フィッシャーマンブーツを洗う海の感触は、なぜか優しく快いものでした。

そして、そっとシャッターを切った写真が、上の一番右の1枚。最後に柏手を打って祈りを捧げる行修者といっしょに、地域の繁栄を祈りました。

◆みそぎ浜での水ごり、来場者の幸せを願
って
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海中みそぎを終えた4人は、浜に設営された水ごり場で最後のおつとめ。たくさんの人が見守る中、1人ずつ水ごりを行います。今年で行修者を卒業する「別当」の村上さんの手から、残る3人に浴びせかけられる水の勢いは、昨日よりもさらに激しく感じられました。

そして、村上さんが自ら水をかぶる最後の晴れ舞台。手桶で冷水を組み上げては、頭上高くから力強く落とすこと、何回繰り返されたでしょう。大役を務め上げた安堵感と、この場から去りがたき気持ちが交錯しているような、見事な水ごりです。

最後は、晴れやかな表情で、見物者に向けての水まき。「水ごりの水1滴、わら1本が幸せをもたらす」と言われますが、遠くにいた私までコートの肩はびっしょり。でも、ほかほか暖かな気持ちで行修者を見送りました。


110120reportT29.jpg木古内の町は、2016年春の新幹線・北海道延伸にともなって、北海道で最初に停車する駅となりました。

開業前には、みそぎロードを飾る地域住民の作った雪だるまのなかに、新幹線はやぶさに乗った「みそぎ雪だるま」がありました。これを作った床屋さんは、「新幹線が通って、木古内にたくさんの人が来てくれるように」と話してくれました。

見に来ていた小学生のグループは、「お前みそぎやる?」「俺やろうかな、いや無理」「男子は軟弱だから~」などと、興奮気味におしゃべり。豊漁豊作、地域の繁栄を願う「寒中みそぎ」は、地域の思いをひとつにする大切な行事であることを肌で感じた2日間でした。

2011/1/20公開

 
 

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