茶房 無垢里(観光スポット)
元町公園や旧函館区公会堂に続く基坂と日和坂にはさまれた、函館の豪商・相馬哲平氏の旧宅の向いに、こじんまりとした印象を受ける純和風の建物があります。塀と年輪を感じさせる樹木に囲まれ、門構えもどこかその奥深さを感じさせる意匠の建築物。現在は「茶房 無垢里」として一般に開放されていますが、これだけ趣のある建物なのに、その歴史については知られていないことが多くあります。つまり、文献を調査するのが困難な建築物であるわけです。このたび、無垢里のオーナーが伝聞で得た家の略歴を伺うことができました。以下はそのお話を基にご紹介をしたいと思います。
この建物、明治の中期までに最初の建物が建築されたと想定できます。建築主は下国氏であると言われています。下国家といえば、日本の戦国時代に道南にあった12館(その地方の領主)のうちの有力な一つであり、後の松前藩の家老ともなった家系であります。その下国氏が建てたのは、現在の敷地と隣(向かって左側の駐車場となっている土地)を併せた広い敷地を利用してのものでした。当時、まだ向かいの旧相馬邸が存在していなかったため、その規模の大きさから巷では「下国御殿」と称されていたそうです。
ところが、経緯はわかりませんが、1928年(昭和3年)になって現在の蔵などの一部を残して建物を縮小して建て替え、現在の形となりました。この昭和3年という年、実はご本人も全盲であり、日本で初めて点字図書館を創設した本間一夫氏が、近くの盲学校に通学するために、この下国氏の家に住むことになった年なのです。下国氏と本間氏は親戚関係にあったため、留萌地方の増毛在住だった同氏の便宜を図ったものと思われます。
その後、時期は不明ですが、白百合学園の寮(アグネス寮)として使用されたり、富士銀行支店長宅となったなどの変遷を経て、現在の店舗兼住宅となっております。この建物は、北海道の歴史を作った下国家と、日本に点字が普及されるきっかけを作った本間一夫氏という「歴史」の一端を担っている家でもあるのです。
このような話を聞くと、どうしてこの建物が凛として上品に、かつ密やかに、今でもその存在感を示しているかがよくわかります。どうぞ、明治時代からずっと函館を見続けてきた蔵を利用した茶房に腰を下ろし、函館の歴史と日本の点字の歴史の一舞台となった過去に想いを馳せてください。そして、函館の持つ奥深さを、日常の喧騒を忘れて味わっていただければと思います。
参考/社団法人日本点字図書館ホームページ内「図書館の歴史:本間一夫と日本点字図書館」
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カテゴリー
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明治・大正の建物
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市電から徒歩5分以内
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無料駐車場
詳細情報
住所 | 函館市元町13-14 |
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アクセス情報 |
市電 「末広町」電停 下車 徒歩5分 |
電話番号 | 0138-26-1292 |
利用時間 |
10:00~17:00 |
休日 |
水・木曜日、冬期休業(12月26日~翌年3月末日) |
駐車場 |
無料駐車場あり(隣地に3台可) |