旧第一銀行函館支店(函館市文学館)
この建物は、ひとことで言うと「古典的」。全国各地に建築されたこの手のものの、典型的な意匠を持つものです。しかし、所在が函館、とりわけ末広町にあると、独特の雰囲気を持った建物として目に入ってしまうから不思議なものです。
大正10年、三井系の銀行であり、日本初の民間銀行でもある第一銀行函館支店として、この場所に建築されました。その後に建てられた旧函館信用金庫本店(旧十二銀行函館支店、2020年に解体)と色使いが似ていますが、外部に施された芸術的な装飾は、さすがに国内主要銀行としての気品すら感じさせます。鉄筋コンクリート・煉瓦造というところからも、当時の隆盛ぶりを窺い知ることができます。また、平らな形状の「陸屋根」を用いたのも、当時の函館では極めて珍しかったようです。
設計は清水組(現清水建設)の西村好時と八木憲一の共作。施工はもちろん清水建設でした。西村作品を見ると、芸術的という言葉がぴたりとはまる建物ばかりです。特に目を引くのは、旧第一銀行横浜支店で、地下鉄工事の際に建物の存在が障害となったのですが、解体ではなく、曳家で移動させて復元するという選択をさせるほどの美しさを持っています。一方、八木憲一は新宿の伊勢丹百貨店を設計するなど、両者とも日本における重要な建築物に携わっていました。そう考えると、函館市文学館がこのような華麗な姿をしているのは当然だと思えてきます。
さて、第一銀行ですが、この場所に建ってからも地方銀行との吸収合併を繰り返し、しまいには三井銀行と合併し、一時期帝国銀行というメガバンクになっていました。戦後再び第一銀行に分離し、その後日本勧業銀行との合併により、第一勧業銀行となりました。
この建物も、そんな変遷に呼応するかのように昭和39年に閉鎖し、その後地元出資の企業「北日本信用販売(現在はジャックス)」が使用していましたが、後に函館市に寄贈され、現在の文学館となりました。
この建物をご覧になる時、ちょっと気にしていただきたいのが、建物に向かって左側奥にある職員通用口附近です。湾曲したアプローチ部分や玄関にかかる屋根の支えなど、こんなところにまでこだわっているのかと、驚くばかり。本物は手を抜くところを知らないのですね。そして、もうひとつは夕陽が差し込んだときの輝き。茶色の外壁に赤い光が当たると、金色に輝いて見えるのです。それは「美」以外の何ものでもありません。
参考資料/銀行図書館「銀行変遷史データベース」、関根要太郎研究室@はこだて、ジャックスHP「沿革」
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函館市文学館
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詳細情報
住所 | 函館市末広町22-5 |
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アクセス情報 |
市電 「末広町」電停 下車 徒歩1分 |
電話番号 | 0138-22-9014 |
利用時間 |
9:00~19:00(4~10月)、9:00~17:00(11~3月) |
休日 |
12月31日~1月3日、展示替え・館内整理時 |
利用料金 |
一般300円、学生・生徒・児童150円(団体割引あり)。共通券あり |
駐車場 |
なし(元町観光駐車場など) |
関連リンク |
函館市文学館(公益財団法人 函館市文化・スポーツ振興財団) |