旧梅津商店(はこだて工芸舎)
かつての函館で、北洋漁業などから還ってきた船員たちが、腹巻に札束を挟み、銭湯と床屋で「男前を上げて」からカフェにくり出す。そんな粋な者たちの賑わいが、まるで東京の銀座のようだということからついた通りの名前が「銀座通り」。大正・昭和前期にわたって歓楽街として栄えたその銀座通りの入口に、すでに明治23年に社屋を構えていたのが梅津商店でした。その類稀なる先見の明と商才によって、一代で巨万の富を得た酒類・食料品卸の梅津商店の創始者である梅津福次郎氏は、また、街への多大なる貢献をした一人でした。
現在の建物は、昭和9年の大火で前社屋が焼失した直後に建てられ、かねてより人々から愛されていたデザインをそのまま継承し、従前の鉄筋コンクリートを木造に変更して、急ピッチで「復元」されたものです。現在でも一見コンクリート建築物に見える曲線を用いたデザインを、木造で再現したということから、いかに当時の函館の建築技術水準が高かったかということがわかります。また、同じデザインを用いて一日でも早い建物の再建を図ったということから、福次郎氏が大火によって焼け出され意気消沈している市民に、「また以前のように元気に生きていこう」というメッセージを与えたように思えて仕方ありません。
現在、建物の内部の事務所部分とそれに繋がっている和室部分を、工芸品の展示販売を行う「はこだて工芸舎」がリノベーションを行い、ギャラリーとして使用しています。その意匠をじっくりと観察することができますが、とても突貫工事で築いた建物とは思えないほどのものです。スタッフの都合がつく場合は建築当時の面影を残す2階の居住スペースも見学可能で、「大金庫を開けよう」体験もできます。
創始者の福次郎氏は、晩年、函館市立中学校(現・市立函館高校)の校舎建築に65万円(現在のお金では数億円)を寄付したということや、函館高等水産学校(北大水産学部の前身)の建設に寄与したことで知られていますが、氏は「長年儲けさせてもらった函館にお返ししただけだ」と言ったそうです。そんな函館を愛する氏の意思を受け継いで建物を守っているのが、現在のはこだて工芸舎であります。(参考/はこだて人物史)
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市電から徒歩5分以内
詳細情報
住所 | 函館市末広町8-8 |
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アクセス情報 |
市電 「十字街」電停 下車 徒歩1分 |
問合せ先 | はこだて工芸舎 |
電話番号 | 0138-22-7706 |
利用時間 |
10:00~18:00(12月31日~1月2日 10:00~16:00) |
休日 |
無休 |
駐車場 |
周辺に有料駐車場あり |
関連リンク |
はこだて工芸舎 |