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明治のハイカラ文化を満喫、旧函館区公会堂徹底ガイド

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函館山の中腹、元町公園の上に建つ旧函館区公会堂。2年半の保存修理工事を経て色鮮やかによみがえり、2021年4月26日にリニューアルオープン! 建物の美しさもさることながら、館内の展示も充実し、ハイカラ衣装体験あり、グッズ販売ありと、まさに歴史的建造物を生かした「まるごとテーマパーク」といえます。明治のハイカラ文化を体感できる、新装・旧函館区公会堂の魅力と見どころを徹底的にレポートしましょう。
 
◆旧函館区公会堂とは?
 
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旧函館区公会堂は、1907(明治40)年の大火によって焼失した町会所の代わりに、豪商相馬哲平や住民からの寄付などを元に、1910(明治43)年に完成しました。和と洋の要素が融合した建築意匠に優れ、館内に残る家具の保存も良好。1974(昭和49)年に国の重要文化財に指定された、函館を代表する歴史的建造物です。なお、相馬哲平の私邸であった旧相馬家住宅(重要文化財)が、歩いて2~3分のところで公開されています。
 
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中央玄関を入ると、1階には食堂や遊戯室、商業会議所の事務室などがありました。戦後はさまざまな施設の仮事務所、また青函連絡船・洞爺丸事件の海難審判の場にも。現在は、展示解説のスペースや休憩所、売店、衣装室などになっています。
 
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2階は、完成当初から大広間とステージが大半を占め、演奏会や展示会などが行われてきました。第二次世界大戦後は、病院として一時的に使用されたという記録も残っています。ステージと反対側には、皇室要人が函館滞在時に利用してきた部屋が並びます。
 
※上の館内見取り図は、部屋の名称を現在の用途で記載しています。(  )は完成当時の名称です。完成当時の各部屋の解説はこちら
 
◆公会堂の歴史がわかる展示
【ヒストリーテーブル(球戯室)】
 
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まず最初に目に入るのはヒストリーテーブルコーナー。元は「球戯室」、政財界の要人のサロンのような場所で、ビリヤードがプレイされていました。ビリヤード台をイメージしたテーブルには、4つのパネルがあり、全国各地の文化財となっている公会堂が一目でわかるパネルから始まり、ぐるりとテーブルをまわって見ていくと、見学の導入として基本的な知識が得られます。
 
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「旧公会堂のうつりかわり」のパネルで目をひくのは、4段の引き出しからなる小さな模型です。下から順に、「竣工から戦中期」「戦後の混乱期」「公会堂再開と昭和修理」「平成~令和修理」と、時代ごとに公会堂の歴史が紹介されています。
 
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それぞれの引き出しには、精巧に作られた小さな小さな人物の模型が配置されています。最上段には、ハイカラ衣装を着て大広間にたたずむ女性の姿や、ステージでコンサートを行うロックバンドらしき姿が......。遊び心あふれる展示は必見です。
 
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旧函館区公会堂は、時代によって外観が何度か変わりました。特に外壁の色は、塗料の痕跡から、当初の色彩やその後の塗り替えの変遷がわかっています。
 
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旧函館区公会堂で使われている建築材料やデザインに関するパネルでは、漆喰天井の中心飾りの「五弁花」、大広間で使われている床材「リノリウム」、壁紙やタイルといった建材など、見どころの詳細がわかります。
 
【ジャーニーズシアター(小食堂)】
 
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ヒストリーテーブルコーナー横の小さな部屋は、小さな食堂だったところ。部屋に入るとセンサーが感知して、ワイドな映像が写し出されます。公会堂の建設から現代までの歴史について知ることができる「ジャーニーズシアター」は、約6分間の上映。
 
【シアター】
 
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2階に向かう階段付近の部屋は、2018年秋から実施された保存修理工事の映像記録(約12分)が上映されるシアターになっています。ここでの主役のもうひとつは、観覧時に座ることができる椅子。座面の張り替えはされていますが明治時代からある貴重なもので、実際に座って、感触を確かめながら、映像を見られるようになっています。
 
◆明治時代からの歴史を語る「部屋そのまま」の展示
【大食堂】
 
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1階の中央部から右手にある大きな部屋は「大食堂」だったところ。当時のままのテーブルが並び、落ち着いた雰囲気が感じられます。現在は休憩スペースになっていて、明治時代の雰囲気を楽しみながら、椅子に座って休むことができます。
 
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2021年11月には、室内にカフェがオープン。市電「十字街」電停近くで老舗珈琲店として営業している十字屋が、その場で淹れるこだわりのコーヒーを提供しています。メニューには、地元で人気の函館牛乳やトラピストクッキーも。
 
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一画にある大きな家具は、函館洋家具「鏡付洋風飾り棚」と呼ばれるもので、もともとここの大食堂に設置されていました。今回、市内の家具職人が引き出しの建てつけ調整や失われた部品の補修などを行ない、美しい姿で蘇らせています。
 
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壁際にある暖炉も、明治時代からのもの。当時としては貴重なイギリス製のヴィクトリアンタイルが使われています。
 
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大食堂や球戯室の後ろ側の「縁側」は、絶好のフォトスポット。太陽の光が入ると床にガラス窓の影が映りますが、じっくり見るとこのガラスの特徴がわかります。影が波打っているものは古くから使われている「手延べガラス」。交換された現代のガラスは影ができません。
 
【皇室関係の宿泊・休憩所】
 
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階段で2階に上がると、大広間の向かいに複数の部屋があります。公会堂完成後の1911(明治44)年、皇太子時代の大正天皇が行啓の宿泊・休憩所として使用したものです。その後も昭和天皇(摂政宮殿下時代)、現上皇・上皇后(天皇・皇后時代)が函館に滞在したときに利用されました。こちらは「御座所(居室)」。
 
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今回の建物の保存修理工事の際には、完成当時からある家具やカーテンの補修やクリーニングといった作業も実施。傷んだ椅子の生地の張り替えや、カーテンのタッセル(布の端に取りつけられる装飾)のつけかえが行われました。
 
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御座所の隣にある「御寝室」。洋風の家具やベッドなどは、東京の家具店を視察し、西洋文化を取り入れて、函館の家具職人たちに作らせたもの。今も各部屋に置かれています。
 
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階段近くには「御後架(お手洗い)」「御湯殿(浴室)」が設けられました。公会堂完成後の1911(明治44)年に、皇太子時代の大正天皇の行啓の際に増築されたもので、エゾマツやヒノキが用いられたとのこと。当時の雰囲気が今もそのまま残されています。
 
【ホテルの浴室や寝室】
 
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1階の浴室や寝室も見学できます。旧函館区公会堂は、地域住民が集まる町会所としてだけでなく、ホテルとしても使う計画があり、そのために準備された部屋が残っています。洋風浴室には、当時からの足つき浴槽が置かれ、天井が高く、湯気がぬける工夫が施されているのがわかります。
 
【商業会議所の事務室】
 
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完成当初、一部の部屋は商業会議所の事務所として使用されていました。現在は見学できる部屋であるとともに、夜間は貸室として一般使用ができます。
 
◆最大の見どころ、圧巻の大広間とバルコニー
 
【大広間】
 
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旧函館区公会堂内の最大の見どころといえる、2階の大広間。つり天井で柱がない広大なスペースであるところが特徴です。演奏会などの娯楽的な催しが開催されてきたほか、大正時代には函館市市制祝賀会の会場として、1927(昭和2)年には小説家・芥川龍之介と里見弴の講演会も行われました。
 
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床には、亜麻仁油にコルクや顔料を混ぜて作られる床材「リノリウム」が使われています(今回の改修で復元)。茶色の濃淡による斜め格子柄を配した寄木風のデザインで、当時の床の残片や古写真から推定して、デジタル印刷で再現されました。
 
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広さにばかり圧倒されそうですが、周囲の細かいデザインにも注目。照明(レプリカ)の取りつけられている漆喰天井の「中心飾」は明治時代からのもので、ベルフラワーやアカンサス、六弁花、五弁花などがデザインされています。
 
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演奏会などが開催されたことから、大広間には音が響き渡るような仕掛けが施されたといわれています。中空の長押風の天井縁(へり)が、大広間を囲むようにあります。
 
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出入口上部には、花綱装飾の「フェストゥーン(花、葉、リボンなどを棒状に編んで、2カ所に掛けてつるす装飾品)」風の木彫があります。明治を代表する洋風建築である旧函館区公会堂には、このような、西洋建築の意匠が随所に取り入れられています。
 
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館内各所にあるサインパネルでは、「AR(拡張現実。コンピュータにより拡張された現実環境)」を利用した補足説明が受けられます。事前に、手持ちのスマートフォンやタブレットにARサービス「COCOAR(ココアル)」をダウンロードして、パネルにかざしてみてください。大広間では、タイムトリップのスペシャル映像も楽しめます。
 
【バルコニー】
 
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大広間からは、ぜひバルコニーに出てみましょう。旧函館区公会堂は、函館港を一望できる基坂の上に建てられたので、開放感あふれる景色が堪能できます。
 
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柱の上部には、建物や内装の装飾のモチーフに多用されている観賞用植物「アカンサス」が精巧にデザインされています。バルコニーに出て右手の柱2本は、雨風の影響を受けやすい位置にあって傷みが激しく、今回の修復工事で取り替えられました。
 
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バルコニーから振り返って斜め上を見ると、屋根に葺かれた瓦が間近に眺められます。洋風建築の旧函館区公会堂ですが、和の要素も取り入れられているのが特徴。瓦屋根に軒の蛇腹や持ち送りなどの黄色のアクセントが新鮮な印象です。
 
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バルコニーから見える景色は、世界的に有名な日本に関する旅行ガイドブック 「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」に2つ星(寄り道する価値がある)として掲載されている見事なもの。フォトスポットとしても大人気です。
 
◆お楽しみの衣装館と売店も
 
函館ハイカラ衣装館
 
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明治時代の香りの残る旧函館区公会堂では、ハイカラな衣装を着て、自分のカメラやスマートフォンで記念写真を撮る体験ができます。衣装の貸し出しは30分2500円から。別室に行って自分で着替えて、必要であれば手持ちの道具でメイクを整えたりも可能。手荷物を入れるコインロッカールームもあります。
 
函館みやげ はこぱこ
 
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売店では、旧函館区公会堂の限定商品と北海道がイメージできる雑貨を販売しています。館内のカーテンの補修で取り外されたタッセル(房飾り)を再利用したブローチ、ピアス、イアリングや、公会堂をかたどったキャンドルなど、ここでしか入手できないレアなものがいろいろ。
 
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旧函館区公会堂
公開時間 (4~10月)土日月9~19時、火~金9~18時 (11~3月)9~17時
・はこだてハイカラ衣裳館 (4~10月)9~17時 (11~3月)10時~16時半 ※受付は1時間前まで
・売店 (4~10月)9~17時 (11~3月)10時~16時半 
・カフェ 10時半~15時半/水曜定休。冬期休業
休館日 12月31日~1月3日、その他臨時休館あり
入館料 一般300円、学生・生徒・児童150円
問い合わせ 0138-22-1001
 
協力/旧函館区公会堂、函館市教育委員会文化財課
2021/4/24公開

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